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2020. 05. 16  

『文章は接続詞で決まる』(石黒圭、光文社新書、2008年)
『「接続詞」の技術』(石黒圭、実務教育出版、2016年)

 ブログに書こうと机の脇に積んでひと月。「明日こそは明日こそは」詐欺を続けている(?)うちに、「翻訳フォーラム」さんがYou Tubeで紹介してくださいました!
URLはコチラ→https://www.youtube.com/watch?v=soeaJjdXIio

 もう、こちらの動画を見て頂くだけで十分なのですが、動画ではどちらかというと『「接続詞」の技術』が中心でしたので、オマケというか「気が向いたら読んでね」的に、二冊の読書感想文を書いておきます。

 あえてこの二冊の違いを挙げるなら、『文章は…』が接続詞を考えるための本であるのに対し、『「接続詞」の技術』は、日々のカキモノに接続詞を適切に使うための本であるということができるかなと思います。手を伸ばせば届くところに置いておくなら『「接続詞」の技術』の方。巻末の一覧表は切り離せるようになっていますので、一読したあとは、この一覧表を見えるところに貼るなり置くなりするのもよいかと(字が小さすぎて老眼にはツラい&スペースの問題がありまして、私はやっていませんが)。

 『「接続詞」の技術』は、動画でも紹介されていたとおり、四種十類の各分類に属する接続詞について、例を挙げながら細かな違いを説明しています。その明解な説明に、ナルホドと頷くばかりです。
 一読して心に残った部分は何箇所もありましたが、そのひとつが「『そして』は帰着点を表す働きがあり(中略)『そして』のあとに情報の比重が置かれるような語感があります」という部分です。よく、andの訳語として安易に使ってしまいがちな「そして」ですが、気をつけて用いないと、うるさいばかりでなく、本来際立たせるべき情報も霞ませてしまうと思いました。以前、柴田元幸さんが「日本語の『そして』はandより強い」と、どこかに書いていらしたのを拝読した記憶があるのですが、それはここで石黒さんが仰ることとも関係しているのではないかとも。そんな風に、別の著者がまったく別の文脈で言っておられたことが、自分の中で関連づけられるのも、(翻訳にかぎりませんが)「学び」の醍醐味のひとつではないかと思います。

 そういう実践的な書籍なので、どちらか一冊をということであれば、『「接続詞」の技術』の方かなと思いますが、できれば『文章は接続詞で決まる』の方も併せて読んでいただきたいです。
 こちらでも、やはり接続詞が四種十類に分類され、その説明にかなりのページが割かれており、実際『「接続詞」の技術』とかぶる部分も多いです。けれど、それ以外の部分に、接続詞を使うに当たってあらためて考えてみてもいいんじゃないかという箇所がいくつもあると思うんですよね。

 目次はこんな感じ。

 序章 接続詞がよいと文章が映える
 第一章 接続詞とは何か
 第二章 接続詞の役割
 第三章 論理の接続詞
 (ここから第六章までの四章を使って四種十類の接続詞を説明)
 第四章 整理の接続詞
 第五章 理解の接続詞
 第六章 展開の接続詞
 第七章 文末の接続詞
 第八章 話し言葉の接続詞
 第九章 接続詞のさじ加減
 第十章 接続詞の戦略的使用
 第十一章 接続詞と表現効果

 第二章「接続詞の役割」で、石黒さんは、書き手・読み手両方の立場から「接続詞」というものを考えておられます。この書く側からも読む側からも考えてみるという姿勢は、石黒さんの新著『段落論』にも引き継がれているように感じました(『段落論』はまだ途中なので、気のせいかもしれません)。
 第七章の「文末の接続詞」は、「日本語の場合、接続詞が文末に埋め込まれている場合があります」と始まります。最初はその考え方に「え」と思うかもしれませんが、読み進めていくと、納得できることばかりで、私は、この章を読んでから、訳文で「のだ」を使いそうになるたびに、「ここは本当に『のだ』がいいのか?」と考えるようになりました(←「のだ」が結構好きだったヒト)。だれでも文章をかくとき無意識のうちに、このいわゆる「文末接続詞」を使っているに違いないのですが、それらの働きについてあらためて考え直すことができる章だと思います。
 また、第九章の「接続詞のさじ加減」には、「接続詞を使わない方がよい場合」が、「接続詞の弊害1~5」として具体的に述べられています。接続詞は文章をnavigateする大事なものではあるのですが、「使わない方がいい場合」というのもあるんですよね(と読んで納得)。『「接続詞」の技術』にも、「不要な接続詞を間引く」という項目がありますが、この第九章ほど詳しく述べられているわけではありません。

 という感じなので、両方併せて読んだ方が、接続詞に対する理解(…いや、自分の場合まだ「理解」できたとは言えないので、「興味」かな)がより深まるんじゃないかと思います。

 動画の中で帽子屋さんは、『「接続詞」の技術』にはたくさん付箋をつけたと仰っていましたが、私は、アンダーラインはしまくりましたが、付箋はつけませんでした。(これもやはり帽子屋さんが仰っていたことなのですが)目次と索引が充実しているので、付箋がなくてもすぐに探している情報に辿り着けるんです(『文章は…』にはぺたぺた貼りましたが)。

 というわけで、「翻訳フォーラム」さんの動画を見てから、表題の二冊を読めば、接続詞がこれまでより可愛い(?)ものに見えてくるんじゃないかと思います。興味の湧いた方は、是非試してみてください。
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Sayo

Author:Sayo
医学・医療機器和訳
循環器植込み系など好物
還暦を前に書籍翻訳メインにシフト中
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『医療エラーはなぜ起きるのか』5月刊
翻訳は楽しく苦しく難しいと実感
老体に鞭打って勉強に励む日々
翻訳について・書籍紹介・セミナー感想など
(2022年5月現在)

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